人が見ているもの

 次の文章を読んでみて下さい。

「お皿の上におにぎりがあります。そのおにぎりを二つに割ると、中から赤い具が見えました。さて、その具は何でしょう」

人によって思い浮かべるものはさまざまだと思います。
おにぎりの形も、俵型だったのか三角だったのか、おにぎりの数や海苔の巻き方も人によって違ってきます。

ですが、皆さんは今ここのページを見ている訳で、実際にはおにぎりはありません。

人が見ているものは、意識をしたものを見ています。

過去にこのような体験をしました。
それはカード・アンダー・ザ・グラスを演じているときです。
一人のお客さんが、明らかにパームをした手の方を見ていたのに、置いたカードの事には、全く気付いてなかったのです。
最初は気を使って、気が付かなかったフリをしているのかと思ったのですが、本当に全く気が付いてませんでした。

おそらく、私がパームしている手の方向を見ていたけど、頭の中では何か違う事を考えていたのでしょう。

逆に全然違うところを見ていたのに、カードの存在に気付いていた人もいました。
その人は、何度かこのマジックを見たことがあって、意識をしていたそうです。
目では違うところを見ていたのに、パームしたカードを横目で意識して見ていたようです。

“ミスディレクションとは目線を違うところに逸らすのではなく、意識を違うところに逸らす事を言う”

この言葉の意味が、ハッキリと理解できた気がします。





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